従業員を雇う時に知っておきたいポイント
- 公開日:2014/11/20
- 最終更新日:2021/02/12
人材の採用は、創業時のみならず、事業を継続する上で常に直面する課題です。募集に始まり、採用、教育、管理と経営者にかかる責任は重く、事業の上でも人材の良し悪しは、事業の繁栄の重要なポイントに一つです。そんな大切な従業員をどのように確保し、信頼関係を築くのかも経営者の手腕にかかっています。
特に創業時の採用は、時間的な制約や教育システムの未整備などにより、創業者にかかる負担はより大きくなります。創業当初は、時間や費用面で大きな投資はできないので、即戦力を求めるケースが多くなります。当然、人の見極めが重要になります。仕事の内容、給与や労働時間などの雇用条件、人間関係など、経営者の人間性や経営理念、事業への意欲などによって、雇用関係は変わってきます。
例を挙げるなら、いくら給料が高くても、仕事がきつく、職場の人間関係が悪ければ、従業員は長続きしません。逆に、給料が高くなくても、仕事にやりがいを持て、人間関係が良好であれば、従業員は長く勤められます。会社と従業員の信頼関係が良好であればあるほど、事業にとってプラスに働きます。経営者だけでなくそこで働く従業員も会社にとっては大切な顔であり、力なのです。
1.従業員の募集について
ハローワークへの求人登録、新聞や求人情報誌への広告掲載、さらに知人への紹介依頼などが、代表的な募集の方法です。
従業員を募集する際には、従事する業務の内容、労働時間、賃金をはじめとする人件費などの予算、人手が必要な期間が一時的なものか継続的なものかなどを検討した上で、募集することが大切です。
正社員
一般に雇用期間を定めずフルタイムで雇われる従業員です。定年まで雇われることが多く、将来、役職に就いて事業の中核を担っていくことなどが期待されます。給与体系は月給制+諸手当+残業代となるケースが多いのが特徴です。
契約社員
民間企業と有期の直接雇用契約を結んだ労働者を指します。契約社員は正社員と同様、フルタイムでの勤務を求められます。一般的に給与体系は月給制あるいは日給制+諸手当+残業代となるケースが比較的多いのが特徴です。
パート・アルバイト
パートは継続的に雇用されるものの、1日や1週間の労働時間が短い場合や勤務日数が正社員に比べて少ない労働者をいい、アルバイトは雇用契約期間が短期や一定の業務のために雇用される労働者を指します。通常は時間給で賃金が決まっており、採用に当たって必要な業務、時間帯だけ勤務してもらうなどの柔軟性があります。
派遣社員
雇用関係のある人材派遣会社から、他の企業(派遣先)に派遣され、その企業において業務を行う労働者のことをいいます。給与等は派遣会社で負担し、派遣先の企業は派遣会社へ契約に基づく金額を支払います。人件費を変動費化できることや場合によっては経験者、必要な資格を有する者を使用することができ、募集や教育の手間が省けるなどのメリットがあります。
※若年者、中高齢者、障害者等を採用する際には、助成制度がありますので、まずは最寄りのハローワークに相談しましょう。
雇用条件と雇用契約について
従業員を採用したら、雇用条件を確認して雇用契約書を作成する必要があります。雇用契約書には雇用期間、就業場所、仕事内容、就業時間と休憩時間、休日、賃金形態、賃金支払方法などの雇用条件を記載しなければなりません。会社と労働者とお互いに書面で確認することが大切です。
就業規則を作成する
人材の採用に当たっては、雇用体制を整える必要があります。近年、法律の改正など労働者保護の傾向が強くなり、労働基準監督署への告発件数も増加傾向にあります。またその内容も賃金、労働時間からセクハラ、パワハラに至るまで多岐にわたっています。
労使トラブルは企業のイメージダウンにもつながりかねない問題です。労働基準法のルールを知り従業員との信頼関係を日頃から築いていくことが大切です。
また、常時10人以上の労働者を雇用する事業所は就業規則の作成と届出が義務付けられています。就業規則は、会社と労働者の間で、労働者が就業の上で守るべきルールを明確にするとともに、お互いの誤解を防止することで労使トラブルを避けるという効果があります。
近年では、労働者数が10人以下の事業所でも労使トラブルを未然に防ぐなどの観点から作成するところが増えています。
以下に労働基準法の基本的なルールを記載していますが、実際に就業規則を作成する際には、細かな決まりや、自社にあったルール作りができているかなど注意する点が多いため、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に相談するのが良いでしょう。
労働時間
休憩時間を除いて1日8時間、1週間で40時間を超えてはいけません。ただし、10人未満の商業、接客娯楽業については週44時間が認められています。
また、業務の繁閑に合わせて労働時間を調整する変形労働時間制なども検討するとよいでしょう。
休日・休暇
休日は毎週1日以上与えるか、4週間を通じて4日以上与えなければなりません。年次有給休暇は、通常6ヵ月間以上勤務する等の条件を満たした場合には最低でも10日分の権利を与えなければなりません。また、パートやアルバイトにも与えなければなりませんが、勤務日数に応じて付与する日数は変わります。
時間外手当
上記で説明した労働時間を超えて労働する場合や休日に労働する場合は、従業員との間で書面での約束を交わし、割増賃金を支払わなければなりません。最低でも時間外勤務は25%増し、休日出勤は35%増しになります。なお、時間外勤務については、通常1ヵ月につき45時間を超えないようにしなければなりません。
※就業規則に新しい制度を設けるなどの条件を満たした場合には、助成金が利用できる場合もありますのでハローワークに相談しましょう。ただし、就業規則に関しては労働基準監督署の所管となります。
労働保険、社会保険への加入について
従業員を雇用した際には、労災保険への加入が義務付けられています。
また1週間に20時間以上及び31日以上雇用する場合には雇用保険への加入も義務付けられます。会社を設立した場合や個人事業でも従業員が5人以上の場合には社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務が発生します。特に助成金を利用する場合には各保険の加入条件に該当する従業員についてきちんと加入させていなければなりません。
労働保険や社会保険には業種により差はありますが、一定の保険料を会社で負担する必要がるので、事業計画を立てる際には、このような法定福利費も考慮する必要があります。
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