事業計画の立て方
- 公開日:2014/11/17
- 最終更新日:2021/02/12
事業計画書は、これから始めようとしている独立・起業の設計図です。
融資を申し込む際や仕入先に取引を申し込む際にも提出が求められます。第三者に事業を理解してもらうための書類でもあるので、その作成は創業の行方を左右する重要な作業といえます。
事業計画の考え方(最終の利益から考える)
事業計画をたてる場合には、まず最終の利益から考えていきます。最低でも自分の生活費と、金融機関からの借入金返済額(注)を事業の最終利益から捻出しなくてはならないからです。
(注)融資を受けて事業をスタートする場合、収支計画を立てる前に、毎月の返済額と利息を算出してみる必要があります。
借り入れした金額が多ければ多いほど毎月の返済額は多くなります。このとき、利息は経費となって税金を節約できますが、元金の返済部分は経費となりませんので、税金まで考えると大変な負担になる場合があります。
ラーメン店Aさんの場合
具体例で、考えてみましょう。ラーメン店を開業したいと思っているAさん。A市内に店舗を見つけました。
開業時に、内外装・厨房機器・運転資金など500万円が必要で、自己資金は200万円、その他は金融機関から300万円の借り入れをすることになりました。Aさんは専業主婦の奥さまと子供が二人、月の生活費は30万円とします。
借入300万円――返済期間5年(年利2%)、毎月の元金返済額5万円(利息は5千円)
手順1)最低限必要な利益を計算する
Aさんの生活費は毎月30万円。借入金の返済額は毎月5万円。Aさんの必要利益は次のようになります。(個人事業を前提としています)
生活費30万円+借入金返済額5万円+税金4万円=必要利益39万円
必要利益は、税金4万円を考慮しなくてはならないことに注意しましょう。税金は、所得が多くなればなるほど税率も高くなっていきます。所得税住民税の最高税率は50%にもなります。
仮に税金(所得税・住民税)の税率を10%としますと、Aさんの必要利益は次のように計算します。
必要利益=生活費30万円+借入金返済額5万円
(1-税率0.1)
=38.888万円→39万円
上記の例では、毎月39万円の利益を上げて、借り入れの返済金と生活費が確保できます。しかし、この利益は借入金の返済と生活費で消えてしまいますから、余裕資金を貯めるためには、これ以上の利益を上げていかなくてはなりません。
手順2)売上原価と粗利益率を見積もる
売上原価というのは、売上高の増減に合わせて変動する費用のことで、仕入や材料費・外注費などが代表的なものです。売上高から売上原価を差し引いたものを粗利益といい、売上高に対する粗利益の割合を粗利益率といいます。
例えば、1杯600円のラーメンで材料費(売上原価)が180円かかる場合の粗利益は、600円-180円=420円
粗利益率は、420円÷600円=70%となります。
手順3)人件費と固定費を見積もる
人件費と毎月固定的にかかる費用がどのくらいあるのか見積もります。固定費とは売上の増減に関係なくかかる費用のことです。例えば家賃、水道光熱費、電話代、リース料、支払利息などです。
Aさんの場合
人件費:パート2人 15万円
固定費:家賃10万円、水道光熱費8万円、電話代1万円、リース料3万円、支払利息1万円、広告宣伝費2万円、その他経費10万円――計35万円
※計画は万単位で計算するため、支払利息については切り上げています。
手順4)必要売上高を計算する
ここまでで求めた見積額を次の計算式に当てはめることで、必要な売上高を計算することができます。
必要売上高=必要利益(手順1)+固定費(手順3)
限界利益率(手順2)
Aさんのラーメン店はどうなるでしょう。
必要利益39万円+人件費15万円+固定費35万円
粗利益率70%
=約127万円
手順5)採算ラインを決める
必要売上高の計算ができたら、どのようにしてこの売上高を達成していくのかを考えていきます。売上高は、客数×客単価ですから、次のように1日の最低の売上目標金額(採算ライン)が決まります。
1ヵ月の必要売上高…127万円
客単価…600円(ラーメン1杯の値段)
1ヵ月の客数…127万円÷600円=2,117人(杯)
1日あたり…2,117杯÷1ヵ月の営業日数25日=85人(杯)
一日あたり85人(杯)という数字が採算ラインとなります。マーケットやライバル店の集客数などいろいろな要素を加味して、来客予測を行い、設備投資の額、借り入れの額、客単価の設定、人件費や固定費の削減、材料調達単価など、すべての面を怠りなく何度も検討をしましょう。
では、Aさんの事業計画書を作成してみましょう。
(参考)本来は上記の計算に減価償却費を計上することで、より正確な計算ができます。減価償却費とは、1個10万円以上の固定資産(建物・内装・設備・備品・車両など)については使用が長期にわたるものとして、支出したその年度に一度に費用計上するのではなく、価値の減少した分を毎年少しずつ費用にすることです。
上記の計算では省きましたが、多額の設備投資をする際には減価償却費の影響が大きいため、計算を含めた方が良いでしょう。
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