小規模事業者の現状と未来-2015年度小規模企業白書-
- 公開日:2015/06/17
- 最終更新日:2021/02/12
今回は、本年度中小企業庁より公表されました、小規模事業白書の内容についてお話します。本書では、小規模事業者の構造・動向分析を行い、どういった事業者が継続的に発展しているかを考察しています。
その中で、特に興味深い内容として、小規模事業者にとっての経営計画の重要性と地域需要の掘り起こしの例が掲載されていましたので、ご紹介します。
1 小規模事業者の現状
(1)事業者の87%を占める小規模事業者
商業・サービス業では、従業員5人以下、製造業では20人以下を小規模事業者といいます。小規模企業白書では、会社のみならず個人事業も含めています。
わが国の事業者数は386万者あり、そのうち小規模事業者は334万者で全体の87%を占めています。
なおこの小規模事業者334万者のうち、従業員5人以下の「小企業者」は312万者で小規模事業者の93%を占めています(図表1)。
(2)小売業・製造業は30年でほぼ半減
小規模事業者の減少が進んでいます。小規模事業者数のピークであった1986年の約477万者に比べると143万者減少しています。
小規模事業者数を業種別に見ると、「小売業」はピーク時の1981年から50%減少し、「製造業」はピーク時の1981年から46%減とほぼ半減しています。
これに対して、「サービス業」「不動産業」は微増傾向であり、それ以外の業種はほぼ横ばいとなっています。
構成比では、「小売業」「製造業」がシェアを落とし、「サービス業」と「建設業」「不動産業、金融保険業」のシェアが年々高まってきています。
2 簡易な経営計画でも前向きな経営意識が生まれた
小規模事業者の「事業の持続的な発展」を促進する政府の取り組みの一つである「小規模事業者持続化補助金」※の交付を受けた事業者へのアンケート調査では、全体(5,266者)の6割が同補助金の活用の条件とされている経営計画を「初めて作成した」と回答しています。
※小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が商工会等と一体となって、販路開拓に取り組む費用(例:チラシ作成費用等)を支援するもので、簡易な経営計画書が必須。
(1)経営に向き合う意識が生まれる
経営計画を作成した事業者に感想を聞いたところ、「自社の強み・弱みが明らかになった」(50.8%)、「新たな事業を企画できた」(50.3%)との回答が5割を超え、「事業の見直しを行うきっかけとなった」(43.3%)との回答も4割を超えるなど、自社の経営と向きあおうとする意識が強くなっています(図表2)。
(2)5割超が新規顧客を獲得
「新たな取引先や顧客の獲得状況」について質問したところ、新たな取引先や顧客を「獲得した」と回答した事業者は51.3%に達しました。「獲得できる見込み」(45.6%)と合わせると約97%の事業者が新たな取引先や顧客を獲得したと回答しています。
また売上が「増加した」との回答は35.0%、「増加する見込み」は54.5%となっています。このことから小規模事業者にとっての経営計画の重要性が裏付けられたといえます(図表3)。
3 地域需要の掘り起こしに挑戦する小規模事業者の例
同白書では、経営環境が大きく変化し厳しい状況が続く中でも、地域に密着し様々な創意工夫をしてたくましく事業活動を行っている事業者を紹介しています。
(1)顧客の創造に取り組む事例
高品質の利用・美容バサミの製造・販売・修理・メンテナンスを行う(株)グリーンマウス(千葉県)は、修理前のハサミの状態・問題点、クセ、日常の手入れ方法などをきめ細かなカルテを、修理したハサミとともにお客様に届けることで次第に地域の安定顧客を拡大し、さらにペット用ハサミの修理・メンテナンスへも進出して順調に売上を伸ばしている。
(2)商店街活性化に取り組む事例
熊本県の「阿蘇一宮商店街」は、かつて客足が郊外へ遠のき寂しくなるばかりだった。その危機感から商店街の二代目を中心に「若きゃもん会」を結成し、看板商品の作成や店先に水飲み場を設置、通りに畳を敷いて自由に花見をする「お座敷商店街」の実施など企画を次々と打ち出し年間35万人近い観光客を集客。商店街の売上も安定するようになったという。
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